2012年1月18日水曜日

『偽薬のミステリー』   パトリック・ルモワンヌ



2005年第1刷発行。
フランスの精神科医・神経科学博士であるパトリック・ルモワンヌの著書。
暗黙の了解とされてきた偽薬の領域に、医師としての臨床もふまえ、科学的根拠に基づいた論証がなされている。
多くが偽薬について論じられているが、偽薬効果(プラシーボ効果 )を知るうえでも参考になると思われます。


「「この薬を飲めばすぐに治りますよ」と十分な確信をもって予言してやれば、投与される薬の作用を大いに高めることになる。このようなはったりは「治癒」効果を促進するので、結局はまったくの嘘だとは言い切れない。」(P75)

「偽薬効果を生み出すのに必要な三つの要素
治療の本当の力または見かけ上の力、医師の信念、患者の参加」(P77)



「医師の熱意、カリスマ性、患者に対する配慮、費やした時間、同情、憐憫、安心させる能力、それに何よりも処方に対する自信などが成功のための重要な秘訣になっている」(P84)


「ある分野で能力が高まるほどますます自信も深まり、自信が深まるほど偽薬効果を生みやすくなる。それが治療の魔術なのである。」(P85)


「病状がふたたび悪化したときーこれは通常短期間であって自然に治る病気ーに治療が加えられると、その直後から急速に回復したのは当然のこと治療のせいにされるのである。」(P95)


「文明人には本質的に科学的ロジックを崇拝する人がいて、そのような人では発病→診察→処方箋→服薬→治癒の順序で進行する病気の治療の中で、錠剤への真の条件づけが成立している。彼らは、もうすでに治癒を約束する信号となってしまった薬剤とよく似たものを服用するだけで十分なのだ!」(P98)



「「何もかもお終いだ、死を待つしかないわ」と言ってがっくりする人は「戦って病気に勝ってみせるわ」と答える人よりその予後がよくない。」(P104)



「神経にかかるストレスが免疫の混乱を引き起こしている」(P106)



「偽薬そのものに善悪の性格はない。結局は、どのように用いるか、ということである。いかなる効果もないはずのものが、ときとして絶大な効果を示し、医学を根底からゆるがしかねないこの恐るべき偽薬が、どのようなものであるにせよ、臨床医学に科学的な性格を与えているということもまた事実なのである。」(P190)



「周囲にいるだれもかれもが熱心に面倒をみてくれるものだから、患者たちがある種の満足感を味わうことになってしまった」(P197)



「偽薬の主たる原動力となるのは、医師の信念とそこから導き出されたもの、そして、患者の信頼である。」(P242)