2011年12月19日月曜日

『テレビじゃ言えない健康話のウソ』  中原英臣


医学博士である中原英臣氏による 本のタイトル通りの本です。



「野菜をたくさん食べると大腸がんの予防になる」
ことは間違いないが、

その理由は「緑黄色野菜や果物に含まれる抗酸化酵素の働きが大腸がんを抑制する」のであって、テレビで言われているように

「野菜には食物繊維が多いため、大腸がスムースに働き、便秘が解消するから」というのは間違いだそうです。(P14)
~抗酸化酵素なんて言葉、言いづらくてテレビ受けしなさそうですもんね。


「言っておきますが、「健康法」などというものは一切ないと思ってください」(P15)
~と、なかなか手厳しいですが、健康的な生活を送ることが結果的に健康につながるのであって、健康になるための健康法はないという趣旨のようです。
つまりわかりやすくいうと、健康とはbeであり、doではないということですね。(え?余計わかりにくいって)



医学的根拠のあるのは、たった六項目」(P18)
~日本には健康診断・人間ドック・婦人科の検査・脳ドックなどさまざまな検診検査があります。
しかし、著者はそのほとんどの検査に意味はないと断言しています。


有効な検査・診断は6つで、
「血圧」「身長・体重」「飲酒」「喫煙」「うつ病」「糖負荷試験」だそうです。


「厚生労働省の「最近の科学的知見に基づいた保健事業に係る研究班」が、健康診断の代表的な二四の検査項目のうち何と一六項目は、『病気の予防や死者の減少という視点では、有効性を示す根拠が薄い』と結論づけたのです。」(P20)  ~検査や診断にかんして難しいところは、個人の利益と集団の利益が必ずしも合致しないところにあります。
1万分の1の確率でガンが見つかる検査を、日本人全員にする必要はあるか?
ガン検査でガンを見つけられた1万分の1の、その「1」が自分や自分の身内、知り合いならば検査を喜ぶでしょう。
しかし、残りの9999人には無駄な検査だったということになります。もちろん当然そこには膨大な費用がかかります。
 ~日本人は安心したいがために検査をしている側面があることにも警鐘を鳴らしています。
本来検査は悪いところを見つけるためのものであり、安心のためではないはずです。



健康な人を病気にする方法」(P36)
~少しセンセーショナルなタイトルですが、これは現実にある“問題”です。
しかも、検査好きな日本人だからこそミスリードされてしまうのです。
健康な人を病気にするにはどうしたらよいか?
それは数字を操作すればよいのです。少し前にメタボの数値って決まりましたよね、覚えていますか?

「1 ウェストが男性は「八五センチ以上」、女性は「九〇センチ以上」ある
2 血圧が「一三〇/八五mmHg」 
3 空腹時血糖が「一一〇mg/dl」以上ある
4 中性脂肪が 「一五〇mg/dl」以上か、あるいはHDLコレステロール(善玉コレステロール)  が「四〇mg/dl」未満である」(P48)

~というものです。

この世界的にも厳しい数値のおかげで、40歳以上の男性の2人に1人はメタボと診断され、予備軍を加えればさらにその数は激増します。

なぜ世界的にも厳しい基準にする必要があるのか?


そもそも男性のウェストが女性よりも細くあるべきという基準になっているということは、誰が考えてもこれはおかしいでしょう。


なぜこんな不可思議な数値になるかといえば、もちろん40歳以上の男性がターゲットになっているからです。つまり、この人たちをどうしても「病気に 」したいのです。
この健康な人を病気にするというのは最近始まった傾向ではありません。、一番身近なアレもそうなんですよ。


「「三九〇〇万人の日本人が高血圧、そんなバカな」
四十年前に一五〇/一〇〇だった血圧の正常値が、いまでは 一四〇/九〇 に。」(P36)

~医療をビジネスとして考えたとき、どうすればうまく儲けられるか?みなさまはこんなこと考えたことはないですよね?
でも世の中にはそんなことを考えている人がいるんです。
医療をビジネスとして考えるとき、病人を相手にするのはあまり効率がよいとはいえません。(なんかおかしな言い方ですが)
本当の(?)病気ですと容体も安定しませんし、病人の確保という点でも不安定です。
ではどうすればよいか?


少し不健康な人に、病人になってもらうのです。
少し不健康な人ならば、少しくらいからだにダメージを与えたところで、死ぬことはまずありません。
少しくらいのダメージ、つまり少し不健康な人に無駄な投薬をするのです。

しかし、元が少し不健康なだけですから、からだへの影響はごく微小です。

そんなバカな」と思われるかもしれませんが、それが今日の血圧事情です。
日本で一番使われている薬剤は血圧降下剤です。

いまや血圧の薬を飲んでいない年配の方はいらっしゃらないのではないでしょうか?

血圧の正常値を下げることで、高血圧と診断される人が激増し、その分、薬も大量に消費されることになりました。

もちろんその分、余分な医療費も増えています。


今、医療問題といえば、なにかと「医者不足」という言がまかり通っています。


例えは悪いですが、ネズミが増えたから猫を増やそう、という発想はおかしですよね?
やるべきことは「ネズミを減らすこと」。その一環として猫云々はあるかもしれません。でも、根本的にネズミを減らさなければ問題の解決にはなりません。
医療ならば、医療現場が大変だから「医者を増やす」ではなく、その前に根本的に「患者を減らす」ことが、問題解決の大前提になるのではないのでしょうか。





> 『こんな健康法はおやめなさい』 中原英臣